カルネ・ド・フランス

バカンス万歳

山の観光地、LA CLUSAZの村の中心。裏に冬にスキーができるフランスアルプスが見えます。

皆さん、今日は。フランスのマヤです。日本はまだ涼しくならないようですが、フランスはすでに秋らしい天気になりました。フランス人にとって、9月の始めというのは、『夏休みの終わり』という意味になります。これを機に、皆さんに今回フランスのバカンスの習慣についてお伝えしたいと思います。

フランスは先進国の中では休暇がもっとも長い国で、30日もあります(日本は10日間で、先進国の中では2番目にバカンスの少ない国だそうです)。夏は一番長い休みで、GRANDES VACANCES(グランドバカンス、大きなバカンス)と呼ばれています。フランス人は3週間から1か月の休みを取ることができて、7月の半ばから8月までは国全体がスローダウンになります。日本人にとって信じられない状態かもしれません。経済的な側面から見ても、会社も工場が3〜4週間の間に閉まってしまうのは決していいことではない、という考えもありますが、フランス人にとってグランドバカンスは、いろいろな意味でとても大事な存在になると思います。

私は日本の会社の仕事をしていますから、夏休みを『短く』し、2週間にしました。今年、私たち3人家族はフランスアルプスのLA CLUSAZ(ラキュリューザ)村に出かけました。フランス東部のオートサヴォア県のアヌジー市から30kmぐらい離れている山の観光地で、冬はスキー、夏はハイキングやゴルフなどを楽しめることができるファミリーリゾートとして知られています。小さい村で落ち着いた雰囲気ですが、お店とレストランがたくさんあり、賑やかなところもあります。私たちはLA CLUSAZにシャレーを持つお友達に招待され、1週間を過ごすことができました。

LA CLUSAZの美しいゴルフ場で、ゴルフを練習する。私にとっては初めてで、なかなかうまく行きませんでしたが、周りの風景はとても美しい。

招待してくれたお友達は、父親と息子の二人組で、お母さんが仕事をしていたから不在でした(これも日本人にとって不思議でしょう!)。私たち5人が毎日スポーツをし、食事もシャレーで一緒に作りました。LA CLUSAZの素晴らしいゴルフ場にも行きました。私にとってゴルフは初めてで、あまり上手ではないのですが、美しいアルプス山脈の風景に囲まれて、とても楽しい体験でした。

家族を大事にするフランス人にとっては、バカンスは何よりも「ファミリータイム」という意味で、特別なプランを立てなくても、「家族と楽しく遊びましょう」ということだと思います。もうひとつは、「バカンス」はラテン語のVACUUS(空)に由来する言葉で、「空な時、空な空間」、つまり「何をしなくてもいい時間」という意味もあると思います。

フランス人はその「空の時間」を上手に使える民族だと思います。例えば、バカンスの間は、贅沢な旅行ができなくても、何時間もかけて家族と一緒に食事をし、ゆっくりと話し合う習慣があります。そのときは、自分の考え、仕事と学校に対する悩み、政治、社会、歴史についても率直にディスカッションすることが多いです。

ワインバーで、アペリティフを飲む。今回はサルコジ大統領の話が中心。画像は左から、夫、私、息子のテオ(11歳)、友達の息子のティボー(14歳)。

例えば私たち5人はLA CLUSAZのワインバーで、アペリティフを飲みながら(大人はワイン、子供たちはフルーツジュース)、サルコジ大統領について2時間も「討論」しました。「賛成派」と「反対派」に分かれて、子供たちも自分の意見をちゃんと主張し、盛り上がりました。あっという間に夕食の時間になってしまいました。

大人と子供にとって、「空の時間」というのは、日常生活を離れて、仕事と学校とは関係ない世界を作り、その中で少し距離を置いた視点から世の中と自分のライフを見つめる意味が含まれていると思います。そのためには「金」、「物」などはあまり必要ではなく、時間の流れに応じて、お互いとのコミュニケーションをエンジョイし、時間そのものの大事さを実感させるのです。

面白いことに、フランスではバカンスの終わり、つまり仕事と学校が始まる9月はLA RENTREE(ラントレー)と呼びます。独特な言葉で、「回帰、復帰、帰還」、という意味で「日常生活に帰る」ということになると思います。長いバカンスの間、「空の時間」を上手く利用し、体とマインドも十分にリフレッシュできたから、「元気になったから世の中に戻りましょう」という意味が含まれていると思います。

現在の忙しい、変化が多い時代であるからこそ、人間には「空の時間」がますます必要になるのではないかと思います。日本の皆さんも、フランスの1か月までならなくても、休みの時間を少しでも伸ばして、「空の時間」を作ったらいかがでしょうか。皆さんもフランス人のように、VIVE LES VACANCES(バカンス万歳)をモットーにしてください。

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