カルネ・ド・フランス

フランス大統領選挙戦 その2

(お断り)フランス大統領選・第1回戦の結果が出る前に書かれたものを掲載しています。

前回に引き続き、フランス大統領選挙戦についてのレポートです。

今回の選挙は、左派のハモン氏と右派のフィヨン氏の間で行われると思われていました。しかし今年の1月、フランスのスキャンダル紙のカナール・アンシェネが、フランソワ・フィヨン氏が妻のペネロップ・フィヨン夫人を15年間ほど「議会随行員」という架空の職で雇っていたことを報道しました。

その期間ペネロップ・フィヨン氏が手にした給料は90万ユーロ(およそ1億円)、ほかに5万ユーロ(およそ600万円)の手当でした。このスキャンダルが表に出た後、フィヨン夫婦は新聞や国家の調査局のターゲットとなりました。数年前学生であった自分の息子と娘を高給料で議会の弁護士研修生として雇っていたこと、そして高級スーツや時計を国に申請せずにプレゼントとして受け取っていたことが報道されています。

普通ならこの時点で立候補を取り下げてもおかしくない状況なのですが、フランソワ・フィヨン氏は毎日イメージが崩れる中、スキャンダルに関してはできるだけ語らず、彼に対する陰謀の存在を主張しながら選挙活動を続けています。しかし大統領選挙が始まる前にフィヨン夫婦がフランス国家から公共財産の横領と詐欺疑惑で起訴され、支持者からも見放され大統領候補からいきなり最も不人気な候補者になってしまいました。

一方、左派のブノワ・ハモン氏ですが、社会党を代表していろいろな約束を選挙人にするも、なかなかプログラムがはっきりとせず、立候補者のテレビ議論では強い人格を見せられず世論調査では落ち目です。ほかにハモン氏は現政権との政策意見の違いによって、同じ社会党の大臣からも見放されています。

右派と左派の強者が脱線したことで、ほかの候補者に光が当てられ、今年はダークホースの立候補者が大統領になる可能性が高くなってきました。そのうちまず1番フランス人が恐れているのは極派のマリーヌ・ルペン氏です。彼女の党はナショナリズムと差別主義が中心であり、フランスではドナルド・トランプ氏の考えとよく比べられています。数年前から起きているテロ事件に繋がる安全対策、移民問題や失業に対する不満を上げて選挙活動を行い、世論調査によれば2回戦には確実に上がるといわれています。

ほかにはオランド政権の元経済大臣であったのエマニュエル・マクロン氏(独立諸派)が、新しい優勝候補に挙がっています。彼は38歳という若さでエリートの道を今まで歩んできて、選挙活動中はほかの候補者にはないエネルギーとアイデアを主張してきて、国民の信頼を得てきました。驚くことにマクロン氏の奥さんは24歳年上で彼の元高校時代の教師でもありますが、この意外なカップルが市民から人気を集め好感を抱かれています。

最後のダークホースはフランス政治の異端児と言われている極左派のジャンリュック・メランション氏であり、かなりはっきりとした社会平等的な考えをもって、話も上手ですが、現在のフランス政治に対する不満を常に示しています。

以上今回の5人の立候補者が今回の大統領選挙の中心人物となる可能性が高く、ほかに候補者は6人いますが、世論調査によると当選する確率は少ないそうです。以下全11人の候補者の簡単な紹介です。

右派(自由資本主義)

  • フランソワ・フィヨン(63歳)。共和党の代表、元サルコジ政権の首相。中道右派だが現在詐欺の疑いで起訴の対象。世論調査の大統領候補3位。
  • ニコラ・デュポンエニャン(55歳)。「フランスよ立ち上がれ!」党の代表。マイナーな候補者に対するメディアの扱いに不満を見せています。
  • マリーヌ・ルペン(48歳)。極右党「フロン・ナショナル」の代表。保守的な政策と反EUのナショナリズムを主張しています。 世論調査の大統領候補2位。

左派(市民平等主義)

  • ブノワ・ハモン(49歳)。社会党代表、オランド政権の元教育大臣。現政権とは違った社会政策とフランスの推進戦略を目的としています。世論調査の大統領候補4位。
  • ジャンリュック・メランション(65歳)。「左派の党」代表。現在の政権に不満を示しており、大統領に選ばれたら市民平等中心の新たなる国家体制を立ち上げる意欲を示しています。世論調査の大統領候補5位。
  • ナタリー・アルトー(46歳)。極左派の「リュット・ウブリエール」(労働者の戦い党) 代表。共産主義で労働者の裕福を中心にしています。
  • フィリップ・プートゥー(49歳)。極左派の「新反資本主義党」代表。資本主義と自由のシステムを捨てて完全平等経済のシステムに国家を作り変えることを考えています。

独立諸派

  • エマニュエル・マクロン(38歳)。中道党「アン・マルシュ!」設立者と代表者、元銀行員と元経済大臣。中間的と柔軟的なアイデアとエネルギッシュな演説で選挙人の心をつかみ始めて数か月で大統領候補ナンバー1になりました。
  • フランソワ・アスリノー(58歳)。「市民共和国連合」設立者と代表者。脱EUと民間企業の弱化を目指しています。
  • ジャック・シュミナード(75歳)。「団結と前進」代表者。現在の経済システムを改正してフランスに新たなる経済パワーを与えるプロジェクトを表しています。
  • ジャン・ラサール(61歳)。「国民行進」の設立者と代表者。中道派のラサール氏は農家出身であり環境保護、産業の持続性や地方政府の強化を主張しています。

大統領選挙戦もあとわずかに迫ってきましたが、今回は本当にいろいろなことが選挙キャンペーン中に起き、人気候補者が不人気になるという予想不可能な状況になってきました。この投票1回戦のラストスパートでも何が起こるかわからないので、4月は立候補者の間でも激しい争いになりそうです。しかしある意味、フランスの国民はそれを楽しみにしているのです。

左上から:
ブノワ・ハモン、エマニュエル・マクロン、マリーヌ・ルペン、フランソワ・フィヨン、ニコラ・デュポンエニアン
左下から:
ナタリー・アルトー、ジャン・ラサール、ジャック・シュミナード、フランソワ・アスリノー、フィリップ・プートゥー、ジャンリュック・メランション


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