ツイッター
インスタグラム
ブログ

Top > Column 連載コラム > carnet 194

Carnet 194

« Where are we going ? » Paris Exhibit by Japanese artist Chiharu SHIOTA –2

「我々はどこへ行っているのか?」日本人アーティスト塩田千春のパリの個展 その2

前回に引き続き、日本人アーティスト、Chiharu Shiota(塩田千春)氏の個展についてご紹介します。

個展の中心はデパートの、吹き抜けになっている 天井から一階までぶら下がっている、白い糸からできた船でした。船はまさに人間の旅をイメージしています。メディアの注目を得て、フランスの雑誌『ELLE』(2月3日発行)にも個展の紹介記事、アーティストへのインタビューがありました。その中で、塩田さんは「船」のシンボリズムについて次に答えています。

「船は希望と未来を象徴します。時間の流れについて語ってくれます。それと我々の存在、希望についても語ってくれます」

……と、おっしゃっています。まさにその通りだと思います。

お話は少し変わりますが、今回パリを訪れたときに、気になったことについても書きたいと思います。それは、この個展もそうでしたが、どこへ行っても、たとえば博物館、歴史的建造物の前でも、皆が携帯電話で「自撮り」していることでした。アート、あるいは周りにいる人間に目を向けるより、「それを見ている自分」に目を向けているような感じを受けます。

それは私にとって違和感のある風景でした。自分に夢中になってしまうと、「自分がどこへ行っているのか」ということさえも、分からなくなるかもしれませんね。最近読んだ新聞記事では、携帯ばかりを見て、挨拶もせずに他人を無視している人を『携帯ゾンビ』と呼んでいました。言い過ぎかもしれませんが、携帯をもっと丁寧に使ってほしいですね。

連載コラム写真
素晴らしい展示スペースの吹き抜けの天井から、飾っていた白い糸からできた船が、空を漂っているような、とても美しい風景でした。アーティストがおっしゃる通り、「人間の旅」を表現している印象を受けました。買い物している誰でも、一瞬だけでも留まり、その船を眺めて、色々な思いをしたと思います。
連載コラム写真
その船はどこへ向かって進んでいるのか……?今後もこの注目すべきアーティストの作品・展示を見たいですね。彼女のアートは人生の美しさ、脆さとはかなさを表現していると思います。
連載コラム写真
雑誌『ELLE』(2月3日発行)のその個展についての記事の中では、塩田氏は「現代のペネロペ」に例えられています。つまり、ギリシャの神話の中の織物を絶えず織っているペネロペのように、「塩田は絶えず糸を編んで、織物の世界を作っている」と書かれています。素晴らしいイメージですね。
連載コラム写真
「自撮り」の時代を一番よく象徴するイメージは、きっとヒラリー・クリントンの2017年9月のキャンペーンの有名な画像です。一所懸命何かをアピールしている彼女を見ている人が独りもおらず、皆が「自撮り」していて、「クリントン氏を見に行った自分」にしか興味がなかったようです。滑稽なイメージでもありますが、何だか不気味な印象も受けました。