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前回に引き続き、10月に来日したデザイナー、クリスチャン・ウェルネール氏についてのエピソードです。
今回の来日をきっかけとして知ることができた、ウェルネール氏の人柄もとても印象に残りました。以前ケルンやパリの見本市などで何回か目にしたことがありますが、まだお話するチャンスがありませんでした。初対面は、少しクールでドイツ人っぽい「堅さ」を感じましたが、実際はそうではなく、とても穏やかで温厚な方でした。仕事やインタビューにも、とても丁寧に対応してくださいました。日本の文化や習慣についても、好奇心が強く、様々なことについて質問されました。それと、デザイナーとしてはとてもしっかりしていることも印象に残りました。
つまり流行やデザイントレンドにあまり目を配らず、自分のアイデアにこだわり、ロゼ社のような大きなブランドに対しても非常に自立した考えを持っていらっしゃる、という気がしました。PRADO(プラド)も、デザインスケッチで留まらず、ご自分でウレタンと生地を使ってプロトタイプを作り、その写真をミッシェル社長に見せたのです。そこまで自分のアイデアについて自信を持てたのは素晴らしいと思います。
おそらくその考えは消費者までも届いていると思います。PRADOはロゼのソファコレクションでは、もっとも多様性と機能性に満ちた商品かもしれません。つまり簡単にベッドにできることのみでなく、背もたれが自由に動かせることによって、様々な座り方と使い方もできます。そういうデザインは人々の生活スタイルを豊かにし、一人でリラックスしたり、テレビを見たり、本を読んだり、パソコンを使って仕事もできますが、背もたれを上手くアレンジすれば一緒に座る家族や友達ともコミュニケーションが上手く取ることができ、人々の生活を豊かにしてくれる「コミュニケーションの場」も生まれるのです。 (次号に続く)